Gate8:ザールから日本人街デュッセルドルフへ

俺は、列車の中で奇妙な光景にでくわした。
行き先は当然デュッセルドルフ。
ザールからは7〜8時間といったところか、

 

ふと顔をあげると、目の前に座っている人が目に涙をうかべていた。
今にも泣きだしそうな勢いである。

 

なぜだろう?
なにか、悲しいことでもあったのだろうか?
俺は、おもいきって涙のわけを聞いてみた。

 

「なに泣きそうなってんの?」
「べつに泣いてないですよ。」
俺の後輩やった。
俺達にはザールで特に仲良くしていた友達が、2人いた。
彼らには、本当にお世話になっていた。
以前からの知り合いでもなんでもない。
そんな人に、ここまで親切にしてもらったことなどなかった。

 

別れの際も、、、

 

たぶん彼は、そのせいで涙ぐんでいたのではないか、
そう判断した。

 

フランクフルト、マインツ、コブレンツ、ボン、
多くの都市を通り過ぎてゆく。

 

次の都市はケルン。
その時の俺のイメージでは、ケルンといえば大聖堂であった。
俺達は窓から大聖堂が見えへんかと、きょろきょろしていた。

 

ちょっとでも大きな建物が見えると、
「あれちゃうの?」
「ちゃいますよー」
「わかった。あれや!」
「ちゃうでしょー」
「なんでおまえが違うとかわかんねん!」
と、俺達ははしゃぎながら、必死こいてさがしていた。

 

そして、どうみてもあれしかないやろってゆうぐらいのデカイ建物が、見えてきた。
しかーし、列車からやと、全然はっきり見えへん。
俺はめちゃめちゃ見たくなってきた。

 

俺は、ケルンで降りることにした。
たかが大聖堂のために、
それだけの理由じゃなかったけど、

 

まぁなんにせよ、彼とはここでお別れだ。
お互い、しばらく会えないのできちんと別れの言葉を交わす。

 

「2人共、仕事が決まり家も見つかって、
落ち着いた状態で今度は会おか」

 

彼は、そのままデュッセルドルフへ向かい、
俺はケルンでしばらくとどまることにした。

 

しかしなぜか俺達は、5日後にまた出会う。

 

 

俺の所持金あと16万。